データ開発拠点Cell Innovation

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Aboutプログラムの概要と研究課題一覧

はじめに

次世代シーケンサーに対応した解析環境の開発や整備を通して、多様で大量のゲノム情報を活用した研究活動の推進に取り組んでいます。

ライフサイエンスは、複雑かつ精緻な生命現象のメカニズム解明をめざす科学であり、新たな医薬品の開発、食料生産の増大、新たな産業の創出など、わが国の産業競争力強化の鍵となる重要な研究分野です。
生物のもつすべての遺伝子のセットはゲノムとよばれ、細胞の核にあるD N A の塩基配列というかたちで保持されています。ヒトのゲノムは約 3 0 億の塩基対からなり、2 0 0 3 ( 平成 1 5 ) 年に、そのすべての配列がヒトゲノム計画という国際プロジェクトにより解読されました。
これを受けて文部科学省では、平成 1 6 年度から2 0 年度まで、ゲノムネットワークプロジェクトを実施しました。細胞内では、ゲノムにある遺伝子の塩基配列に基づいてタンパク質がつくられ、他の遺伝子やタンパク質と複雑に相互作用しながら機能しています。このプロジェクトでは、ヒトの遺伝子やタンパク質のネットワークを解明し、得られた成果をデータベースとして整備して、発生、免疫など生命現象の研究、また、がん、糖尿病など病気の治療法の開発に向けた研究に取り組みました。
さらに、平成 2 1 年度より開始された、革新的細胞解析研究プログラム ( セルイノベーション) は、ゲノムネットワークプロジェクトから得られた成果や、機器・設備、人材、データなどを活用しつつ、これまでなしえなかった大規模かつ多面的なゲノム関連情報の解析を、革新的なデータ産出能力をもつ次世代シーケンサーを利用して行うとともに、細胞内のようすを描き出すイメージングなどの手法を駆使して、ゲノムサイエンスの観点から、細胞のしくみ、ひいては、生命のしくみを解読することをめざしています。
このプログラムでは、生命現象の統合的な理解や医学・薬学など医療や産業への貢献のほか、構築する拠点をさまざまな大学や企業の研究者が利用できるような基盤として公開することにより、がん、発生・分化など、幅広い研究分野へ波及効果を与えることが期待されます。

プログラムの必要性と背景

  • 欧米およびアジア各国において、生命科学研究の基礎となるゲノム配列 、ゲノム機能の研究に対して、国家プロジェクトとして積極的な支援を行つている状況の中で、今後 、わが国がライフサイエンス研究をよリー層推進していくためには、遺伝子発現制御 、シグナル伝達 、代謝制御など細胞機能のシステムを理解する研究を重点的に実施していくことが求められます。
  • ゲノム関連情報解析に用いるシーケンサーの技術的進展はめざましく、従来型と比べて桁違いの処理能力をもつ超高速の次世代シーケンサーの実用化が始まっています。米国、英国、 中国、シンガポールなどでは、すでにシーケンサー拠点整備が行われており、わが国のライフサイエンス分野の国際競争力を維持するためには、シーケンス拠点整備は急務であり、併せて、シーケンサーからは大量かつ多種多様なデータが産出されることから、膨大なデータを扱うためのデータ解析拠点を整備することが必要です。
  • 発生・分化 、がんなど経時変化が重要な意味をもつ生命現象について細胞レベルの解析・解明を行うためには、ある時点のスナップショットであるゲノム関連情報解析に加え、細胞情報の経時・連続計測を行う研究を推進していくことが必要です。

期待される効果

細胞プログラムの解析により、さまざまな疾患について、発症メカニズムの解明と、新たな予防法 、診断法、および治療薬創出等の治療法開発に向けた基礎的知見・技術の提供が可能になります。また、このプログラムで構築したシーケンス拠点などの基盤設備を大学や企業などのライフサイエンス研究者に広く公開することにより、幅広い研究分野への波及効果が期待されます。

プログラムの構成

セルイノベーションプログラムは、1)シーケンス拠点、2)データ解析拠点、3)先導研究から構成されます。

  • シーケンス拠点
    ヒトゲノム解読には、染色体 DNA(ゲノム)塩基配列を自動で読み取るシーケンサーという機械が使われました。これは手動の 100〜 1000倍もの速さで配列を読み取れるものでしたが、近年では、従来のシーケンサーのさらに100〜 1000倍もの速さをもつ次世代シーケンサーが開発されています。
    この革新的な技術開発により、ゲノムDNAの塩基配列だけでなく、遺伝情報を媒介するRNAの種類と量 (トランスクリプトーム)、ゲノムの構造が少し変化することで遺伝子の働きを決めるエピゲノムなど、多種多様なゲノム関連情報が高速に得られるようになってきました。そこで、これらの配列情報を大規模かつ体系的に収集することができるよう、複数台の次世代シーケンサーを整備した拠点を構築し、データを産出します。この拠点では、次世代シーケンサーの生み出す配列情報の正確さを確保するための技術を開発するとともに、得られた配列のゲノム上の位置や推定される機能などを解析します (1次解析)。
  • データ解析拠点
    シーケンス拠点から産出される多様かつ大量のデータを取り扱うための計算機資源を整備した拠点を構築し、シーケンス拠点が産出した1次解析データの生物学的な意義づけやデータ間の関連づけ(2次解析)を先導研究と共同で行っています。
    これらの 1次・2次解析データと、先導研究で産出されるその他のデータをデータベース化するとともに、ゲノムネットワークプロジェクトから得られた成果などの既知データを統合して細胞内の複雑な生命現象を理解するためのプラットフォーム (基盤)の構築をめざしています。
  • 先導研究
    次世代シーケンサーを活用して得られるデータを細胞機能の解析に結びつける研究を、課題 A、 課題 Bの 2つのジャンルで行います。
    課題 Aでは、このプログラムでターゲットとする細胞について、シーケンス拠点の次世代シーケンサーで取得される種々のデータに基づき、トランスクリプトームの挙動や遺伝子・染色体の構造変化を解析します。これに加えて、GFP(緑色蛍光タンパク質)などのバイオマーカーや顕微鏡などを用いて細胞状態を可視化するイメージング技術や、細胞あるいは生命を1つのシステムとして理解しようとするシステムバイオロジーの研究を同時に行い、細胞機能の解明をめざします。
    課題 Bでは、従来の技術では取得できなかった細胞の情報を、新たな次世代シーケンサーを利用して取得するための革新的な技術の開発と、それを活用した細胞機能解析研究を行っています。

研究推進体制

プログラムの円滑な実施を図るため、プログラムディレクター(PD)およびプログラムオフィサー(PO)を配置します。また、進捗状況の確認や成果の取りまとめや広報などを行う運営委員会、シーケンス拠点における先導研究のデータ取得に関しての調整や外部開放の方針に関する検討を行うシーケンス拠点運営ワーキンググループ(WG)、個人のゲノム情報などの取り扱いに関する検討を行う倫理ワーキンググループ(WG)を設置します。
また、プログラムディレクター(PD)、プログラムオフィサー(PO)および研究実施者と連携し、2つの拠点と先導研究との間の情報の共有化、運営委員会などの実施および研究成果の社会への発信などにより、プログラム全体の円滑な運営を行う事務局を設けます。

次世代シーケンサーに対応した解析環境の開発や整備を通して、多様で大量のゲノム情報を活用した研究活動の推進に取り組んでいます。

近年のDNAシーケンサーの技術革新で、従来と比べ短時間で桁違いに大量のデータが取得できる『次世代シーケンサー』が登場し、格段に網羅性が高く詳細なDNA観測ができる時代になりました。

セルイノベーションは、大規模・多面的なゲノム情報等の解析により細胞・生命プログラムを統合的に理解することを目指したプロジェクトで、次世代シーケンサーを活用するための基盤としてシーケンス拠点とデータ解析拠点の2拠点と、次世代シーケンサーを利用し研究する先導研究機関から構成されます。

先導研究機関がシーケンス拠点に次世代シーケンサーを用いた観測を依頼し、データ解析拠点はシーケンス拠点から観測結果を受け取ります。先導研究機関がデータ解析拠点を利用して必要な解析を行いその結果をデータ解析拠点が先導研究機関に提供します。

データ解析拠点では、データ間の関連づけを行ったデータベースの整備や情報解析や統計解析ツールの拡充を通して次世代シーケンサーを活用する研究活動の支援を目指しています。シーケンス拠点と密接に連携して計算機資源を整備すると共に、先導研究が利用可能な各種解析環境を構築します。また、ゲノムネットワークプロジェクトなど公共データの活用や、ターゲットタンパクプロジェクト、DDBJとの連携を行うことで、プロジェクトで蓄積したノウハウの有効活用と情報発信を行います。

データ解析拠点

代表者名 代表機関 研究課題 備考
池尾 一穂 情報システム研究機構
国立遺伝学研究所
データ解析拠点の構築と情報研究開発
分担研究
分担代表者名 分担機関 サブテーマ 備考
豊田 哲郎 理化学研究所
生命情報基盤研究部門
オミックス統合解析による高精度センシング技術の開発、および、イメージ解析のアノテーションDB構築への対応
見原 明 東京大学
医科学研究所
セルイノベーションにおける動向調査業務並びに研究推進業務
森下 真一 東京大学
医科学研究所
イン・シリコ細胞システム解析のための技術開発

シーケンス拠点

代表者名 代表機関 研究課題 備考
渡辺 恭良 理化学研究所
ライフサイエンス技術基盤研究センター
次世代シーケンサー拠点整備および運営

先導研究 課題A

代表者名 代表機関 研究課題 備考
松田 道行 京都大学
大学院生命科学研究科
細胞がん化シグナルネットワークの統合システム解析
分担研究
分担代表者名 分担機関 サブテーマ 備考
秋山 徹 東京大学
分子細胞生物学研究所
遺伝子発現解析を基盤とする細胞がん化シグナルのシステム解析・1時系列リン酸化プロテオミクスによる癌細胞増殖浸潤制御システムの解明
岡田 眞里子 理化学研究所
基幹研究所
シグナル転写ネットワークのインフォマティクス解析
代表者名 代表機関 研究課題 備考
井上 聡 東京大学
大学院医学系研究科
次世代シーケンサーを活用した前立腺がんと乳がんの細胞制御システム機構の解明
分担研究
分担代表者名 分担機関 サブテーマ 備考
堀江 公仁子 埼玉医科大学
ゲノム医科学研究センター
ホルモン治療抵抗性モデルがん細胞の作製と乳がん臨床検体におけるホルモン受容体標的因子群の発現機能解析
間野 博行 自治医科大学
ゲノム機能研究部
乳がん細胞におけるマイクロRNA発現プロフアイルの網羅的解析
近藤 滋 大阪大学
大学院生命機能研究科
がん細胞のホルモン治療抵抗性獲得機構に関するシステムパイオロジーによる解析 ~平成23年度
堺 隆一 国立がんセンター研究所
細胞増殖因子研究部
イメージングを活用した前立腺がん・乳がんの転移シグナル解析 ~平成23年度
代表者名 代表機関 研究課題 備考
上田 泰己 理化学研究所
発生・再生科学総台研究センター
細胞比率制御ネットワークと細胞ヘブ学習則の解明
代表者名 代表機関 研究課題 備考
白髭 克彦 東京大学
分子細胞生物学研究所
初期発生における雌雄染色体コリオグラフィーについての革新的研究
分担研究
分担代表者名 分担機関 サブテーマ 備考
岸本 健雄 東京工業大学
大学院生命理工学研究科
ライブイメージングと細胞生物学的手法による雌雄染色体コリオグラフィーの研究
代表者名 代表機関 研究課題 備考
岡崎 康司 埼玉医科大学
ゲノム医学研究センター
神経細胞機能に着目した、ミトコンドリア呼吸鎖異常を起こす遺伝子変異の系統的な探索
代表者名 代表機関 研究課題 備考
萩原 正敏 京都大学
大学院医学研究科
網羅的スプライシング暗号解析に基づくRNA 病の解明と治療技術の探索
分担研究
分担代表者名 分担機関 サブテーマ 備考
細谷 孝充 東京医科歯科大学
大学院疾患生命科学研究部
スプライシング操作化合物の開発
大野 欽司 名古屋大学
大学院医学系研究科
エクソン特異的アレイ・CLIPによるスプライシング制御配列の網羅的解析

先導研究 課題B

代表者名 代表機関 研究課題 備考
宮脇 敦史 理化学研究所
脳科学総合研究センター
細胞個別的シーケンス解析のための光学的サンプリング技術の開発
代表者名 代表機関 研究課題 備考
伊藤 隆司 東京大学
大学院新領域創成科学研究科
細胞解析研究革新のための高性能エピゲノムシーケンス技術の開発
分担研究
分担代表者名 分担機関 サブテーマ 備考
中島 欽一 奈良先端科学技術大学院大学
バイオサイエンス研究科
神経細胞分化・可塑性に関与する網羅的エピゲノム解析 ~平成23年度
代表者名 代表機関 研究課題 備考
神原 秀記 日立製作所 中央研究所 単一細胞由来mRNA の網羅的定量分析用前処理技術の開発
代表者名 代表機関 研究課題 備考
相賀 裕美子 情報システム研究機構国立遺伝学研究所
系統生物研究センター
生殖細胞及び精子幹細胞の発生分化機構 ~平成23年度

データ解析拠点では、本プロジェクトに参画している先導研究機関に対して解析支援を行ってきました。またその解析支援を通じて次世代シーケンサー(NGS)データ解析のノウハウを蓄積してきました。

サポート内容の例

  • 解析サーバの提供
  • 解析ツールについて情報交換
  • RNA-seq解析(解析レクチャーおよび解析サポートを実施)
  • 発現解析(RNA-seq,CAGE)で共同研究を実施
  • ChIP-seq解析などで情報交換
  • Exome解析などで情報交換を実施。日本人の1000Genomeデータ取込み
  • Bisulfite解析などで情報交換を実施。要望を受け、データ解析機能を開発中
  • スプライスバリアント解析の検証を協力して実施する予定
  • 微量サンプルの発現解析について情報交換

NGSデータ解析要望の割合

NGSデータ解析要望の割合

集計対象期間:2010年4月1日~2012年12月28日